よくわからないSDS-PAGE


学生実験が知らない院生が実験してるビデオを見せられてレポートを書くとかいう本当にやる意味あるのかっていう感じになってますね
教科書で読むだけではわからないことを学ぶのが目的なはずなのに、どうしてこうなった…
僕の研究室でも先輩がSDS-PAGEの実験を撮影して学生に見てもらったらしいです
ラボに所属する人が困らないよう、ビデオだけではわからないとても面倒くさい SDS-PAGEの手順を教えます
あと生化学の勉強になるかもしれない

1.そもそもSDS-PAGEって?

詳しい原理は自分で調べて(投げやり)
まあ簡単に言えば、電気泳動によってタンパク質がもつ電荷や高次構造を(ほぼ)無視して分子量だけで比較することができる実験です
これを行うことで目的のタンパク質がちゃんと精製できてるかを確認したり、ウェスタンプロッティングに使ったりすることができます
SDS-PAGEの結果をもとに次の実験の計画をたてることが多いので、我々は日夜臭い試薬を嗅ぎ続けるのです

2.サンプルの調製

電気泳動によって結果を得るためには、タンパク質を事前に変性させる必要があります
タンパク質にはそれぞれ固有の電荷や構造があり、そのまま流すだけでは分子量だけではなく電荷や構造によってでも泳動距離が変わってしまい、正確な比較ができなくなります
その固有の電荷や構造はSDSやβ-メルカプトエタノールという試薬を使うことによって、全てのタンパク質が負の電荷を持ち、直鎖状にすることができます
そうすることで泳動するタンパク質を同じ電荷、同じ構造にすることが可能になります
(原理はわりと面倒なので割愛)
そのため調べたいタンパク質と上記の試薬が含まれるバッファー(通称サンプルバッファー)を混ぜ、95℃で加熱してタンパク質を変性させます
加熱した後は-30℃で保存して電気泳動をする時に解凍します
ちなみにβ-メルカプトエタノールはとても臭いから僕は嫌い

3.ゲル作り

臭いのを我慢してサンプルを作り終わったら、次はそれを泳動するためのゲルを作ります
SDS-PAGEで使用するゲルは分離ゲル(通称下ゲル)と濃縮ゲル(通称上ゲル)に分かれています
なんでこうなっているかはかなり説明がダルいので興味ある人は調べて知らなくても実験できるし
下ゲルと上ゲルは、ゲルのpHやアクリルアミドの割合が違います
これによってサンプルの移動が変わるとか
アクリルアミドの割合が多くなるほどゲルの網目が細かくなり、より小さなタンパク質も分離できるように
そこは目的のタンパク質によってアクリルアミドの割合を変えてね
あとアクリルアミドは神経毒なので扱う時は手袋をはめましょう←ここ重要
試薬をどのくらい分注するかはいろんな人が計算してくれているのでそれを参考にしましょう
最初はゲル板に調整した下ゲル溶液を入れ、上に1-ブタノールを加えて1時間くらい放置します
下ゲルが固まったら1-ブタノールを捨てて、上ゲル溶液を調製して下ゲルの上に注ぎます
ゲル溶液を入れたらコーム(サンプルを入れる用のウェル=穴を作るためのもの僕は歯ブラシと呼んでる)をさして固まるのを待ちます
上ゲルも下ゲルも固まるまで約1時間くらいかかります
その間真面目な時は論文を読んだり、今までの実験データをまとめたりしますが、たいていTwitterに逃げるか、コンビニに買い物に行ったりします
また、下ゲルは固まったら1-ブタノールを入れて乾燥しないようにして4℃に保存すれば結構持つので、僕は下ゲルだけ作って帰るということをよくします
そんなんだから結果が出ないんだぞ

4.泳動

上ゲルが固まったらコームをゆっくり抜いて、泳動槽にセットします
泳動槽には泳動バッファーをたっぷり入れておきます
ゲル板をセットする時ゲルと泳動バッファーの間に空気が入っているとそこだけ電気が流れなくなり結果に影響するので入らないようにしましょう
この作業がなかなか難しい
泡が入ったら水道水で洗い流してもう一度チャレンジします
一発で泡を入れずにセットできた日は実験が成功する(謎ジンクス)ので頑張りましょう
セットしたらサンプルをウェルに入れ、いよいよ電気を流します
この時電圧をどのように設定するかはとても重要です
電圧が高いとはやく泳動が終わりますが、バンドが歪む可能性が高くなります
電圧が低いとその逆です
僕ははやく帰りたいのでいつも170Vくらいで1時間泳動させてます
歪みを絶対許さないマンは50Vくらいで時間をかけて流しましょう
電圧の限界の目安としては先輩曰く上ゲルと下ゲルの境目から泡が出ない程度らしいです

5.染色

電気泳動が終わったら、いよいよゲルを染色します
この作業はいろんなやり方があるらしいけど、一般的なのはCBBを使って染色するのじゃないかなと思います
染色はovernight(≒夜中放置する)できるのでタッパーに染色液を入れてシェイカーの上にのせたら帰れます

6.観察

染色が終わったゲルはスキャナーで読み込んで解析します
目的のバンドが出てることを祈りましょう

SDS-PAGEは基本的な実験ですが、地味に面倒だし、危ない試薬を使うしで正直あまりやりたくないです
でもこれでタンパク質を確認しないと次に進めないから頑張ってやっていくしかないわけです
生化学系の研究室ならSDS-PAGEは必須なのではやいうちにマスターしたほうがいいです
実験は楽しいぞ!!
でもはやくお家に帰りたい!!!!